入眠困難で困っている人がぐっすり眠れるようになるため、入眠の儀式を取り入れると良いでしょう。
入眠儀式は、5~6つの方法があり、効果があるかは個人差があります。
しかし、自分にとって良い方法が見つかれば、入眠前に取り組んでみたらいいですし、あの手この手を尽くしても改善されなければ、何かしらの病気が隠れている可能性を疑っても良いかもしれません。
本記事では、入眠の基礎・基本から、入眠時に起こる症状(入眠時ミオクローヌスなど)、入眠儀式として有効な方法、入眠剤に関してなど、入眠に悩みを持つ方が快眠できる方法をテーマとし、まとめています。
布団に入っても中々眠れない、眠るまで1時間以上かかってしまうなど、入眠困難で困ってらっしゃるな方に強い味方になる内容です。
ご協力いただいた医師
【所属】クリニックフォア新橋 院長
【お名前】圓山 尚
【監修医師プロフィール】
金沢医科大学卒業後、クリニックフォア新橋の院長。皮膚科は内蔵の疾患やアレルギーとの結びつきも多く、内科、アレルギー科も含め総合的に捉えて診療するよう努めています。
入眠困難という状態や入眠障害を知る
不眠症のひとつである入眠困難とは、布団に入っても中々寝付けない状態です。
眠れない要因はいくつかあり、それぞれ対処していく必要があります。主に以下の原因が考えられます。
眠れない原因
- ストレスによる入眠困難
- 繰り返し見る悪夢に対する恐怖
- カフェインによる覚醒作用
- パソコンやスマホによる刺激(脳が日中だと勘違い)
- 生活リズムの悪化
- 昼寝のしすぎ
- 病気や怪我の痛み、苦しさ
入眠困難な状態は、いくつかに分類することができます。入眠困難な状態を作り出している要因、すべてに対して適切な対処をしていくことで、改善が期待できるでしょう。
精神的な要因であれば、不安を取り除く必要がありますし、怪我や病気の痛み・苦しみで眠れないなら、治療が必要です。
不規則な生活を送り、昼寝を多くとっているなら、朝7時に起きるなど、規則正しい生活を送る必要があります。
病気や怪我、精神疾患などは、専門の医師のご指導のもと、治療が必要でしょう。 そうではない方で、入眠に対して気になる点がありましたら、向き合っていきましょう。
一般的に入眠までの時間(入眠潜時)は何分?
布団に入ってから眠りにつくまでの時間を入眠潜時といいますが、おおよそ何分くらいが平均なのでしょうか。
入眠潜時は、寝付きの良さ、悪さで表現されます。一般的には、10分以内に眠ることができれば、寝付きはいいと言われ、30分以上かかると寝付きが悪いと判断されます。
眠ろうと布団に入ってから、30分以上経っても眠れない状態は入眠困難と呼ばれます。
布団に入ってから、どれくらいで眠っているか、少し意識してみると良いでしょう。
もし、入眠に30分以上、もしくは1時間以上かかっているのであれば、入眠儀式などを取り入れ、寝付きを良くするために手を尽くすことで快適な朝を迎えられるでしょう。
入眠時ミオクローヌス(手足のびくつき)は何の前兆?
眠りにつきそうなタイミング、眠っている最中に手足がびくつくことはありませんか?
突然起こると、身体に何か病気を抱えているのではないかと不安になります。
手足のびくつきは、ミオクローヌスと呼ばれ、筋肉が瞬間的に痙攣を起こしている状態です。症状の程度は様々で、小さな痙攣もあれば、重症になると手足をバタバタさせるような大きな動きも起こりえます。
睡眠中にも、入眠時にも起こる可能性があり、入眠中なら目を覚ます可能性も十分にあります。睡眠障害のひとつ、中途覚醒が起こる原因のひとつに、入眠時ミオクローヌスの存在が考えられます。
なお、入眠時ミオクローヌスは、レム睡眠時に起こりやすい症状と言われていますが、なぜ起こるかの原因はまだわかっていないことも多いです。
抗うつ薬や抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬などを服用したり、逆に薬の服用を中断した際に起こりやすいという説もあります。また、鉄欠乏性貧血や腎機能障害も原因となり得るとされており、細かく見ていく必要があります。
もし、薬などを使用せず、入眠時ミオクローヌスが起こっているなら、専門の医師に相談すると良いでしょう。本人の自覚症状がないケースもあるため、暗視センサーやカメラを使った症状の確認が必要な場合もあります
入眠困難や入眠障害は薬で解消するしかない?
入眠困難な状態が続き、日常生活に支障をきたしている場合、睡眠薬などの薬を頼るしかないのでしょうか。
そんなことはありません。入眠剤など、薬を活用するのは最終手段だと考えた方がいいです。入眠剤は、睡眠を促すことがメインで、眠れるようになる体質づくりには決して向いていません。
入眠困難の根本解決をするなら、寝やすくする儀式を行い、入眠しやすくする状態を作ることをおすすめします。
次項で、入眠を促す入眠儀式のやり方を6つほど取り上げます。
入眠儀式は、今すぐにできるものから、多少のお金がかかるものまで様々です。自分のできるものから取り組んでみることをおすすめします。
【入眠儀式まとめ8選】入眠しやすくする方法は?
入眠しやすくする入眠儀式の方法をまとめます。今日からできる方法もあれば、新しく物品を購入するこ必要があるもあります。
簡単なやり方と、どういった効果が得られるかもまとめて書いていきます。
入眠儀式の定番、入浴!湯船にゆっくり浸かる
入眠儀式の定番として、入浴があげられます。寝る前の1~2時間前に、熱さをあまり感じない程度の温度(39~40℃)の湯船にゆっくり浸かると、副交感神経が優位になり、頭もぼーっとしてきます。
ぬるめの温度に浸かるのが良いとされており、熱いもしくは冷たい温度は、交感神経を優位に働かせてしまうため、目が覚めてしまいます。
ぬるめの湯船に浸かり、ポカポカと血の巡りも良くなれば、身体の隅々まで血が行き渡り、必要な栄養が運ばれます。また、血の巡りがよくなれば、入眠時の体温調節も行いやすくなり、自然な眠りが促されます。
寝る前はシャワーだけ、夜、あまりに疲れているため、入浴はなしにして、朝にシャワーだけを浴びる生活をしている方は、特に試して欲しい方法です。
また、入浴剤にもこだわると良いでしょう。ドラッグストアなどで入手できる入浴剤の中で、安眠効果の高いものもあります。ラベンダーやネロリ、ホップ・バレリアンは、気持ちよい眠りを導いてくれる香りです。
香りは好みがあるため、好き嫌いが分かれるでしょう。そのため、自分の好みにあったものを使い、リラックスタイムを過ごしましょう。
足浴にも入眠効果はある?
入眠前の効果的な入浴によって安眠効果を得られるというのはわかりました。ただし、体力的にもお風呂に入るのはちょっと大変……と感じている人もきっといるでしょう。
その際は、足浴だけでも入眠効果があるため、おすすめします。
足浴は、身体的な理由から入浴が難しい人もぜひ取り入れたい部分浴です。介護施設や病院などでも取り入れられています。効果的に活用したいところです。
ではなぜ、足浴は入眠効果があるのでしょうか。
足浴を行うことで、全身の血が巡りやすくなります。手足の末端部分は、血が滞りやすいのですが、足を温めることで血の巡りが良くなり、循環機能が高まります。さらに、副交感神経が優位になり、リラックス状態が得られます。
足浴のメリットは、入眠効果だけではありません。雑菌が繁殖しやすい足を清潔に保つだけでなく、足や爪、ふくらはぎの状態を細かくチェックできるという利点もあります。
足のマッサージをすることで、手で足の状態を細かく観察することができますね。タコができている、爪が健康的かどうかも確認できるでしょう。
身体の状態を気にすることで、未然に大きな病気を防ぐきかっけにもなり、入眠効果以外にも、多くの利点があげられます。
入眠前のストレッチ
入眠前のストレッチも、入眠儀式のひとつとしておすすめです。
睡眠の質を上げる方法のひとつに、軽く運動をすることがあげられます。デスクワークやテレワークなど、パソコンを活用した仕事が中心になっている方は、どうしても運動不足になりがちです。
そこで、運動不足解消にも繋がる入眠前のストレッチを行うことで、深い眠りを得ることができ、睡眠の質も上がっていく効果が期待できます。
ストレッチは、身体の緊張をほぐすだけでなく、心もほぐれてきます。緊張した筋肉を緩めることで、血流がよくなり、副交感神経を優位にする力があります。
特にゆっくりと入浴してからのストレッチがおすすめで、その場合は、普段より1時間程度早くお風呂に入るようにするとのんびりストレッチが出来るでしょう。
入眠儀式が多くなりすぎ、一つひとつに時間がかかってしまうと、どうしても睡眠時間が削られます。そうならないように注意しましょう。
また、ストレッチをするのに頑張りすぎないことも重要なポイントのひとつで、気持ちいいくらいが丁度いいのです。
気になるポイントを重点的に行うより、全身のストレッチを行った方が効果的です。20秒~30秒を2セットくらい軽く行うのがベターです。
入眠呼吸法で寝やすい状態を
寝る前に呼吸法を用いて全身を整えることも、入眠を促すのに効果的です。入眠呼吸法と呼ばれ、覚えれば誰でも簡単にできる方法なので、習慣化させたいところです。
ストレッチと併用ならストレッチ後に入眠呼吸法を行うと効果がより高まります。
入眠しやすくなる呼吸法は、丹田呼吸法です。やり方を以下に記します。
この呼吸法を行う場合、余計なことは考えず、息を吐く時は、悪いものを全部吐き出す気持ちで、吸う時は全身にエネルギーを巡らせるような感覚で行ってください。
- ぐらの姿勢になり、背筋はピンと伸ばします。
- 丹田(おへその下)に手を平にしておく
- 身体中の空気を口から吐き切る
- 鼻から息を吸った後、口を細くして長く息を吐きます。
※「吐いてから吸う」を意識し、ゆっくり行うのがポイントです。
もう一つ、入眠呼吸法として有効な「大の字呼吸法」を紹介します。
こちらは簡単で、仰向けになり手足を大の字にします。呼吸は、吐き切ってから吸うを意識します。
吐く時は、布団やマットレスに身体が沈み込むようなイメージで、吐き出す時は、全身が浮かび上がるようなイメージで行うと良いでしょう。
大の字呼吸法は、誰でも簡単にできますので、取り入れてみてください。
入眠時に音楽を活用する(ゆったりとした曲調限定)
入眠時に音楽を活用するのも、心地よい眠りが得られる入眠儀式のひとつです。
しかし、音楽といっても何でもいいわけではありません。アップテンポで、気持ちを高揚させる音楽は、交感神経を優位にするため、かえって逆効果です。また、気持ちを暗くするようなジャンルも相応しくないでしょう。
ゆっくりしたテンポの音楽を、小音量で流すことがベターです。
また、歌の場合、歌詞を意識してしまう可能性が出てくるため、眠れなくなるケースもあります。
α波が出るような音楽を中心に、予めセットして、一定時間流れるようにすると良いでしょう。途中で広告が入るような音楽(動画)は、切り替わった際に気になってしまうため、控えた方が良いでしょう。
アロマを活用してリラックスを促す
リラックス効果を得るには、アロマ(エッセンシャルオイル)を活用するのもひとつです。芳香浴を行うことで、嗅覚から脳にダイレクトに作用し、ぐっすり眠れるようになります。
ただ、アロマといっても何でも良いわけではなく、ラベンダー、ゼラニウム、オレンジ(優しめの香り)、ベルガモット、ゆず、ネロリ、サンダルウッドなど、リラックス効果や気持ちを落ちつかせてくれる作用のある香りを選ぶようにしましょう。
香りは好みがはっきり分かれるため、複数の香りから自分の好きなものを選ぶことやブレンドをするのも楽しさが広がりますね。
ディフューザーを活用するか、ティッシュに数滴垂らすような方法でも十分でしょう。自分の好きな香りで幸せな入眠を得ましょう。
睡眠に特化したサプリメントを活用する
食事を意識することはもちろんですが、入眠に効果的な食材を食べ続けるのは根気がいります。そこで、サプリメントを活用するのもひとつの方法です。
睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンを作るためのトリプトファンや、漢方で使われるような自然素材が使われているサプリメントもありますが、これらは、普段の食事では摂取しにくい成分です。
サプリメントなら、毎日小まめに摂取することができるため、かなりおすすめです。
入眠困難な状態を改善する選択肢のひとつとしてサプリメントを活用するのも良いでしょう。
不眠症 サプリメントについてはこちら
【2020年最新】不眠症サプリメントランキング11選│サプリの効果や副作用まとめ
入眠剤を活用する
様々な入眠の儀式を行ったけれど、あまり効果がなく寝付けないという場合、入眠剤を活用するのもひとつの方法です。
入眠剤といっても大きく分けて2つあり、いわゆる睡眠薬(睡眠導入剤)と睡眠改善薬があります。ドラッグストアで入手できる市販品は、睡眠改善剤で、医師の処方が必要なのが、睡眠薬です。
睡眠薬のみに頼っていると、その場しのぎにしかなりません。入眠しやすい体質に改善するのが大切であり、これらを同時並行すれば、徐々に入眠剤の量も減り、長期的に使わなくて済むでしょう。
また、人によってはプラシーボ効果で眠れてししまうケースもあります。そのため、偽薬として売られている食品もあります。まるで薬のようなPTP包装が施されており、睡眠薬として信じ込めば、眠れるようになる可能性もあります。
入眠剤に関しては、詳しく書かれている記事がございますので、参考にしてください。
医師が教える不眠症薬についてはこちら
医師が教える不眠症を薬で治すには市販薬と処方薬どっち?副作用も合せて解説
入眠の儀式を活用しても改善されない場合は?
入眠の儀式をいくつか行っても、改善されないケースもあるでしょう。もし、入眠儀式が習慣化されても、まだ、入眠潜時が30分~1時間かかっているようなら、別の対策も実行する必要があります。
その場合、主に外的要因に目を向け、入眠しやすい環境を作り出すことに取り組んでみましょう。
入眠角度の優れたベッドを活用する
ほとんどの人は、布団かベッドで眠る場合、平らな状態で眠ります。しかし、水平では、腰痛を抱えている、足がむくみ重くて気になる、呼吸が苦しいなど、人それぞれ悩みが解決されないままであり、入眠できないというケースもあります。
実は、人には眠りやすい入眠角度というのがあります。
- 呼吸がしやすいのは上体を30°ほど起こした状態
- 足を20°ほど高くするとむくみが解消されやすい
- 膝が軽く曲がり上体が起こされると腰への負担が減る
など、その日の体調や身体的な状態によって入眠角度を変えられるベッドがあります。眠りやすいようにカスタマイズができるベッドは、入眠しやすい環境づくりに最適です。
寝具を見直してみる
布団やマットレス、枕など、寝具を見直してみるのも入眠環境を整えるという点において重要です。
マットレスなら、まるで雲の上に寝転がっているような無重力系のものもあれば、ガッチリ身体を支えてくれるマットレスもあります。腰痛を改善するような敷布団やマットレスがあるので、変えてみるのもひとつです。
枕も首の角度が変わるため、枕によって負担が多くなる、軽減するという面があります。自分にぴったりな枕を選ぶと入眠しやすくなるでしょう。
掛け布団も、その日の温度・湿度によってベストな物が変わります。季節によって変えるくらいに留めているなら、体温調節できる毛布や薄手の掛け布団を用意しておくことで快適な入眠が得られるでしょう。
また、寝具を清潔に保つことも重要です。小まめに天日干し、風通しの良い陰干しを行うと良いでしょう。
睡眠改善薬を活用
毎日、快適に眠れない。けれど病院に行くほどでもないなら、ドラッグストアなどで睡眠改善薬を求めてはいかがでしょうか。
抗ヒスタミン薬など、使うと眠くなるような薬はいくつか存在します。ドラッグストアで売られている市販薬は、風邪薬などの副作用で眠くなる成分を引き立たせた設計がなされています。
睡眠改善薬の問題点は、繰り返し使うと効き目が薄くなることです。いわゆる耐性がついてしまう状態で、本来治したい薬効が効かなくなるケースもありますので、注意が必要です。
病院へ足を運び医師の診断を仰ぐ
入眠困難が続き、日々の生活に支障をきたすなら、やはり一度医師の診察を受けることをおすすめします。
何かしら病気を持っているケースでは、それを的確に治していくことが鍵になります。
病院へ足を運ぶ場合、心療内科、脳神経外科、精神科、メンタルクリニックなど、いきなり行くには躊躇してしまう部門ではないでしょうか。そこで、まずは最寄りの内科の先生に相談してみると良いでしょう。
一般内科の先生の判断で、別の科を勧められたら、そちらに向かえばよいのです。
不眠症の治し方についてはこちら
【医師監修】不眠症の治し方!4つの不眠症の原因と治療方法を解説
入眠障害の改善は眠れる体質と環境を作り!
入眠困難状態を改善するには、入眠剤などに頼るのではなく、眠りやすい体質に変化させていくことがポイントです。入浴やストレッチ、呼吸法など入眠儀式を行い、リラックス状態を作り出すことで、眠れるようになってくるでしょう。
入眠儀式だけで変わらない場合、寝具を見直す、音楽やアロマを活用するなど、外的要因を整えることで入眠環境が改善されます。
病院や睡眠薬を活用するのは、最終手段です。病気や怪我などが入眠の妨げになっているとわかったならば医師の診断を仰ぐのがベストですが、多くの入眠困難な状態は、生活習慣の乱れから来ていることが多いです。
細かく見直して、寝付きのいい身体を作っていきましょう。